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夢の実現は次の夢への第一歩 難病の子の夢を全力で応援したい

難病を抱えた子どもたちの夢を叶える活動を行う、ボランティア団体の広島支部代表、奥田郁江さん。
自身の介護体験や将来の介護を見据えたリフォームなど、あらゆる経験が現在のボランティア活動の基盤になっているようです。

奥田 郁江(おくだ・いくえ)さん
プロフィール
安芸郡府中町在住。大学卒業後、病院で栄養士として勤務。結婚と育児を経て、再び栄養士として働く。50歳で退職し、以前よりボランティアメンバーとして参加していた「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」の広島支部開設を機にスタッフとなる。

子どもの夢実現に向けて活動への認知を高めたい

 柔和で温厚な表情の中に凜とした雰囲気を感じさせる奥田郁江さんは、世界33カ国で活動するボランティアグループ「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」の広島支部の代表として活躍。「野生のイルカと泳ぎたい」、「ウルトラマングレートと一緒に戦いたい」といった、難病と向き合う子どもたちの夢を叶えるべく、日々活動しています。「こうして人前に出ることは決して得意ではないのですが…」という奥田さんですが、各メディアへの出演によって団体の認知を高め、活動を広く正しく知ってもらう広報の役割も担当。「認知を高めることが、子どもたちの夢の実現への近道。時間的な猶予が少ない子どもも多く、迅速にお話を進めることはとても大切なことなのです」と奥田さんは言います。

50歳の節目に思い立ちボランティアの道へ

 栄養士の仕事をしていた頃から「メイク〜」のボランティアに参加していた奥田さんに、転機が訪れたのは2005年。団体の広島支部が発足することになり、奥田さん自身がちょうど50歳という節目を迎えたこの年、団体の正式なスタッフに。子育てが一段落した頃に母親が若年性アルツハイマー病を発症。10年間介護した母親を見送った後で、これからの自分の人生を考える時期でもありました。ある本に、「50歳の時に立ち止まって、これからの人生をどう生きたいか思い描くのとそうでないのとでは、その後の生き方が随分違ってくるものだ」と書かれているのを見て共感を覚えたことも一つのきっかけ。さらに、自身が介護をしていた時の経験も大きかったようです。
  「肉体的にも辛かったのですが、それ以上に閉塞感や孤独感など、精神的な辛さが大きくて。そんな時は少しでも話を聞いてくれたりするだけでもうれしいんです」という実体験を踏まえ、本格的にボランティアの道を歩み始めました。「子どものお母さんが辛い状況にある時に、『一緒に楽しいことをしましょうね』などと、少しでも手を差し伸べられれば」と奥田さん。一人ひとりが手と手をつなぎ、そこに多くの人が心を寄せていくことがボランティアであるというのが奥田さんの考え方。そして、「ボランティアは特別で大変なことだと構えないでほしい」とのこと。「『できる時に、できる事を、できるだけ行う』というくらいの気軽さで参加してもらい、よりボランティア活動が社会に根付いてほしいです」と奥田さんは言葉に力を込めます。

夢が叶ったことの喜びが新たな夢実現への力になる

 広島支部ができたことによって団体の認知は高まり、「メイク〜」で夢を叶えた子どもも増えてきました。その子どもたちが同じ境遇の子どもに、「すごく良かったよ。君もやってみたら?」という具合に自分の経験を伝えることで、団体の活動は徐々に広がりを見せ始めています。何万人に1人という難病を抱える子どもたちが主に入院している大学病院や日赤病院でも、すでに広く認知されています。大きな手術を前に、心が沈みがちになっている子どもに対し、「手術をがんばってディズニーランドに行こうね」というように、少しでも心の支えになるような手伝いができればと、奥田さんたちは日々心を砕きます。
  ある小学3年生の男の子に夢を聞いたところ、「一晩でいいから、家族4人で一緒に過ごしたい」という返事が返ってきました。その子は小学1年生の時からずっと入院していて、「妹と一晩だけでも遊んでやりたい」と願っていたのです。その願いを叶えようと考えた時は寒い時分だったため、その子の容態も考えて暖かい沖縄へ行くことに。夢が叶うと知った男の子は、沖縄に行くまでの間、現地のボランティアに手紙を書いたり、インターネットで沖縄のことを調べたりして、明らかに活気が出てきたといいます。「酸素ボンベを持参し、主治医の先生が同行するほど病状の重い子で、行くまでは周囲に心配されました。でも、家族ですてきな3日間を過ごした後、行く前以上に元気になって帰って来たんですよ」と、うれしそうに語る奥田さん。夢が叶ったことの喜びだけでなく、周りの多くの人が自分の夢を応援してくれていることを、子どもたちは小さいながらにも感じているのだとか。
  「『夢は、見ている間が花だ』なんて言われますが、子どもたちにとっては、まず夢をもつことがエネルギーになり、一つの夢の実現が次の夢をもつことにつながる。つまり、夢を叶えることは、ゴールではなく次の夢のスタートラインに立つということなのです」。奥田さんは、この活動を通して、子どもだけでなく人間にとって夢をもつことの大切さをつくづく痛感させられたそう。子どもたちの夢の実現を通して、自分たちが教えられることも大きいといいます。「もちろん、協力して下さる方ばかりではありません。時には挫折も経験しながら、子どもたちの夢を叶えていくことは、私たちが生きていくということにつながるのだと思っています」という言葉には、奥田さんの心の強さと信念がにじみ出ています。

介護する側・される側の両者に優しいリフォーム

 ボランティア活動を行う平日は府中町の自宅マンションにいる奥田さんですが、週末は実家のある庄原市で過ごしています。単身生活を送るご主人のリタイア後にここで暮らす生活を考え、築100年以上という実家のリフォームを始めたそうです。「お風呂も車いすに乗ったまま入れる、完全なバリアフリー設計。工事は一級建築士の資格を取った地元の幼な友達に依頼しました」。週末以外は不在のため、平日も工事に入ってもらうことを考えると、信頼して家の鍵を預けられることが工事担当者の第一条件。そのため、業者選びにおいては彼女しか考えられなかったそうです。工事の進捗状況は、彼女から随時送られてくる画像を見て確認していました。
  その後、自宅の水まわりをリフォームすることにした奥田さん。最初のトイレは、親戚の工務店に依頼。年老いた将来、水を流す時によろめいたりすることのないよう、センサーで蓋が開閉したり自動的に水が流れるウォシュレットの便器に取り替えました。その次に、浴室をリフォームしようと考えた時、奥田さんは前と同様に信頼できる業者に依頼したいと思っていました。ちょうどその頃、マエダハウジングの前田社長との出会いが訪れます。「実は、こまめにポスティングされていたチラシは以前から目にしていたのです。お料理のことやリフォーム事情などが書いてあって、とても楽しく読ませていただきました。紙面からお仕事に対する心意気も伝わってきましたね」と、安心してリフォームを依頼することができたそうです。
  浴室のリフォームコンセプトを、実家同様バリアフリーにしたのには理由がありました。「56歳になり、肉体的な衰えを少しずつ実感するようになってきたのです」と奥田さん。母親の介護をしていた頃、「どうしてこんな小さな段差につまづくんだろう?」、「なぜここがスムーズに上がれないんだろう?」という場面に多く遭遇したそうですが、自らも年齢を重ねてきて、少しの段差を乗り越えることも楽ではないことが実感できたといいます。入り口にかなり大きな段差があり、母親の介護中も入浴させる時にかなり苦労したことから、将来介護を行う人にも負担をかけないようにという配慮も大きかったようです。
  「今になって、あの時にもっと優しくできれば良かったと思うことも多いです。住まいというのは、そこに暮らす人の人生の営みであり、人生に寄り添っていくものなんですね」と奥田さん。年齢や状況に合わせて、家もいろいろな形に変えていく必要性を感じたようです。

バリアフリーはもちろん、浴槽の高さを低くし、浴槽内にはひじ置きを設けるなど、浴室のリフォームには奥田さんの介護経験が生かされている

夢を叶える原動力は子どもたちの手の温もり

 以前、「メイク〜」の活動で、北陸地方に暮らす難病の子どもの、「自宅をリフォームしたい」という夢を叶えたことがありました。お風呂は冬の寒さが身にしみる五右衛門風呂。家族の大変さに心を痛めていた子どもの夢の実現に向けて、住宅系企業に事情を説明し、スポンサーの一部として参加してもらったそうです。マエダハウジングの前田社長も、「リフォームで何か私たちが力になれることがあれば、ぜひ協力したいと思っています」と前向きな姿勢を見せています。
  「宮島の鳥居のライトアップが見たいという千葉在住の子どもがいて、今度私たち広島支部がそのお手伝いをすることになりました。呼吸器が手放せない難病の子どもで、どうすれば負担をかけずに宮島まで行くことができるか考えています」とうれしそうな奥田さん。「男の子で乗り物も好きだから、バリアフリーの路面電車に乗ったらきっと楽しいでしょうね」と、自身も楽しみなようです。
  「子どもたちに手を差し伸べるのは私たちですが、つないだ手から温もりや勇気をもらって力づけられているのも私たちの方なんですよ」という奥田さんたちの活動に、今後も多くの理解と支援が集まるよう、願わずにはいられません。

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